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2007.08.01 *Wed*

日記ログ 偽島13 堕島12

ぱみ日記13

『この翼だけでも、脚がないと満足に飛べやしない
このまま私は朽ち果てて消えてゆくのだわ』

月の出る夜、パミスは鳥を見つけた。
真っ赤な真っ赤な鳥。瑪瑙のように赤い鳥だった。
大きさは文鳥くらい。小鳥ではないけれど、まだまだ小さな鳥だった。
右の足が折れていた。

その鳥から、細く小さな声が聞こえてくる。
『・・・・・私に、もっと強靭な脚があれば・・・・・・。』
つぶやきのような、声。
その赤い鳥は、夢をみているようだった。


「脚を、あげましょうか」
パミスは鳥の声に応えて言った。

『あら、ほんとう・・・?』
鳥は、問いかけに気付き、身動きはせず声だけで答える。


「そのかわりあなたは、その羽毛に包まれた体を手放すことになります。」
パミスは、力ない笑顔を浮かべ、続ける。
「別の姿が欲しいんですよね・・・・?」


「その脚があればなにが叶うのか知りませんが・・・。
傷つかなかった自分。鳥のままのあなた。
ケモノにやられる前の、足を失う前の躰。
・・・・・・・・それが永久に叶わなくてもいいというのなら、差し上げましょう、この脚を。」


赤い鳥は、やはり動かないままで答えた。
『あなたの足がほしかったところだけど、よくみたらあなた、脚もなにもないじゃない。』
ひどく呆れ果てた、力ない声だった。

「ええまぁ、私はこういう存在ですから。」

『・・・・・遠慮するわ、そんな、脚・・・・。』
赤い鳥は、パミスの申し出を断ってきた。


鳥は、さっきより少し冷たくなってきていた。




手の中で少しづつ消えていく命に、パミスは問いかけた。
「そうですか・・・・。では、貴女そんななりですが、どうでしょう、一緒に来ませんか?」


「私は神ではないから、あなたの命が尽きたら、それをよみがえらすことはできません。
でも例えば、あなたがその躰を失うことを惜しんでいるというのなら、治療の手助けはできます。
脚が強くなるわけでもないし、疾く走れるようになるわけでもないです。
夢は見れるかもしれないけど、あなたはあなたのまま。

それでもいいなら、あなたを連れていきましょう。
私がケモノより強いという保証はないけれど、一人でここで消えるよりも、いいというのなら、ですが。」


               ◇
               ◆
               ◇



自然の摂理として、力を奪うことは認められても、命を吹き込むことは許されない。
一度消えた命を再び呼び戻すことは、自然の理から逸脱した現象だからだ。

つまり、禁忌である。

終わりを告げる命には、寄り添って最後の大輪を咲かせる手伝いをする。
変化を望むものには、望む変化を。




月の綺麗な夜だった。

パミスは今日もまた、花畑の真ん中にそびえる、大きな木の下に行った。
頭上からこぼれる儚い音色。
星が輝くようで、とても美しかった。
今日は、星は見えない夜空だけれど。


「・・・・・・・聞こえますか?」

パミスは、音の主の姿が見えないまま、問いかけた。

「手の中で消えていく命にできるのは、生きる選択をもちかけるだけ。さみしいですね、なんだか、冷たい人みたいで。
もっとも、なにがしかの均衡を司る精霊は、制約が大きすぎて、生命あるものには、冷たいオブジェでしかないのかもしれないですねー・・・。
・・・・・・命に縛られない自由のかわりに、ともに悲しむことを求められない。

私たちは そういう存在なのでしょうか。」


しばらく静寂が流れた。
そして、音の向こうから少年のような声が聞こえた。

「君の問いに答えるならば・・・・・。その感覚を教えるもの、だね。」
「ときには、悲しくても?」
「そうかも知れないね。・・・・・ただそう感じるのなら、君は人に近い存在なのかもしれない。」
まだ音の主の姿は見えない。それでもパミスは問いかけを続けた。
あえて音の主の方を見ないようにしながら。パミスは今、どんな顔をしていいかわからなかった。
「なぜ わたしたちは 生まれたときからすべきことが決まっているのでしょうか・・・・。」
「それは、知っているだけのこと。
変える術をしっているのなら、変えても構わないということだよ。」


「変わっても、いいのでしょうか。」

パミスが顔を上げると、音の主は木の上からパミスを見下ろしていた。
情けない顔をしているだろうな、パミスはそう思ったが、音の主はいつもと変わらないアルカイックスマイルを浮かべて、静かに見ていた。

「そうだね、いつもという訳にはいかないだろうけど、たまには良いんじゃないかな。」

曲が止んでいることに、パミスはようやく気付いた。
音の主は、曲を止めて話を聞いてくれていたらしい。
パミスは、手を止めさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、少し嬉しかった。

「・・・・・・リクエストしても、いいですか。
この星空の下に眠るたくさんの命に、『豊饒の歌』を。」



この翼だけでも、脚がないと満足に飛べやしない
このまま私は朽ち果てて消えてゆくのだわ


あの脚があれば逃げられたかしら
それとも、仕返しが出来たかしら


私が、本当に欲しかったのは
傷つかなかった自分
鳥のままの私。
ただし、ケモノにやられる前の、足を失う前の躰

それを失ったことを後悔しているからこそ
惜しんでいるからこそ
足を取り去ったその獣より疾い脚
強靭な脚を求めた。

私を襲った、そのケモノを恨みながら。
鳥を襲ったその存在を恨みながら。




               ◇
               ◆
               ◇




おかしな娘に会った。色とりどりの花を体に散りばめた、まだ幼そうな娘だ。

「脚を、あげましょうか」
そう言われて、最初は喜んで答えた。
「あら、ほんとう・・・?」

そのかわり、と、私を抱きかかえて続ける。
「そのかわりあなたは、その羽毛に包まれた体を手放すことになります。」


別の存在になることで、体を失ってもいいの?


おかしな娘は、脚をくれるというかわりに、おかしな問いかけをした。
幼い子どもだと思っていたが、大人びた笑顔を浮かべ、少し憫れんだ目でこちらを見ている。
それに、脚というけれど、この子は・・・・・。
「あなたの足がほしかったところだけど、よくみたらあなた、脚もなにもないじゃない。」

「ええまぁ、私はこういう存在ですから。」
脚というけれど、この子に脚は見えなかった。
目の錯覚かもしれない。たしかにさっきは、脚が見えた気がするのだけれど・・・・。
今は、何故かただの一輪の花に見える。・・・なんという花だったか忘れてしまったけれど・・・。
花に脚があろうはずもない。

もう、ここまで私の目は霞んでしまったのかしら。

私は、その一輪の花をみて、もう私はこの世界には居られないのか、と思った。
「・・・・・遠慮するわ、そんな、脚・・・・。」





「そうですか・・・・。では、貴女そんななりですが、どうでしょう、一緒に来ませんか?」

花娘は、別の案をもちかけてきた。
この、もうあとどのくらい生きられるかわからない私に、ひどくおかしな提案だった。

「私は神ではないから、あなたの命が尽きたら、それをよみがえらすことはできません。
でも例えば、あなたがその躰を失うことを惜しんでいるというのなら、治療の手助けはできます。
脚が強くなるわけでもないし、疾く走れるようになるわけでもないです。
夢は見れるかもしれないけど、あなたはあなたのまま。

それでもいいなら、あなたを連れていきましょう。
私がケモノより強いという保証はないけれど、一人でここで消えるよりも、いいというのなら、ですが。」














私は、選んだ。
自らの躰で生きることを望んだ。


わたしに もういちど この大空を。













・・・・・・・・・・連れてって


               ◇
               ◆
               ◇


 
強い脚を手に入れることはなかった

私は私の足を手に入れた。

さまざまな命を食べてきたぶんだけ、治りは簡単にはいかない、気がする。
でもなんだか不思議。花娘といると、回復する力が沸いてくるような気がする。

まだまだ自由ではないけれど
私が次にまた疾いケモノに会うときは
今度はこの妙ちくりんな花娘が一緒だ。


私は、ひとつだけ誓いをした。
私が治るまで、花娘の行動に従う。
そのかわり、花娘が出来る限り私を衛ると。


治るまで、なんてうざったい、ずっと衛れと言ったら
そうしたら、あなたは治ったあとに自由がなくなる、と。

治ったら、あとは任せる。

花娘はそう言った。
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| 偽島 |

COMMENT

こちらこそどうもです~。
流星もどきも見に行きましたーよー
うわぁぁぁ。
描いていただいて、まじ嬉しいです。

鳥は、今回マナ0になったんで、そろーそろ物語を締めにかかろうかなー、と思ってます。
2007/08/21(火) 00:48:20 | URL | ぱみすPL #- [Edit
素敵な……
感想遅くなりましたがっ
切なさと美しさが同居したお話と
絵ですね……。
鳥はいつか羽ばたけるでしょうか。

さり気なく登場させてくださって有難うございます。
嬉しいです……!
2007/08/18(土) 11:14:14 | URL | シェオール創造主 #- [Edit
ありがとうございま~す~。
2007/08/08(水) 17:09:10 | URL | ぱみすPL #- [Edit
綺麗な絵ですねー。
2007/08/05(日) 13:58:05 | URL | ゆーじ #N3Nh44gI [Edit

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